情報メディア学会: Japanese Society for Information and Media Studies
更新日[2020.10.19]

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第19回 研究大会 が開催されました

■ 大会開催報告

 2020年7月4日(土)に、情報メディア学会第19回研究大会をオンライン開催しました。新型コロナウイルス感染を考慮し、本学会では初となるオンライン会議となりました。スタッフは10:00前より接続確認等の作業を行い、予定通り10:30に開会することができました。

 総合司会は角田裕之幹事がとり行い、最初に開会挨拶が植村八潮会長により行われ、プログラムの紹介を頂きました。

 基調講演では、「“継承の困難”とMLA連携:その両者を繋げて学部学生の調査研究力の底上げを狙うことの試み」をタイトルとする水谷長志氏(跡見学園女子大学教授・元東京国立近代美術館情報資料室長)による講演が行われました。

 水谷氏は導入として現在の新入生の生年が2001年であり、この年は国際貿易センタービルのテロ事件が起きた年であること、いくつかの文化遺産消失の例について述べられました。2019年はフランス・パリのノートルダム大聖堂の火災、日本では沖縄・首里城の火災が発生したことに触れられ、2011年の東日本大震災での図書館や博物館の被害についても触れられました。その中で、博物館におけるエピソードとして、資料に添付されたタグを元に、散逸した資料が回収可能であったことを紹介され、このタグがメタデータであることを指摘されました。水谷氏は、このタグ添付に代表されるMLAの資料組織化の活動が、“継承の困難”を克服する手段ではないだろうかと述べられました。

 さらに水谷氏は、学部学生に課した「MLA連携の事例を探す」という課題について、Mの「作品・資料」とLの「図書・文献」はアプローチすることができるが、Aへの体験の不在とアクセス困難さに由来してかなりハードルが高い、と評し、L-A二者間の関係からでは到達できない新知見を学生が得た時,学生の成功体験になるものと考えている、さらにMを拡張してS[探索主題課題(Subject)]とLとの関係から導かれるAの発見により構築されるSLAの連携が、学部学生の調査研究能力の向上に力を発揮することができると期待している、と述べられました。

 最後に、元図書館情報大学教授徳山五郎氏の言葉「情報学は図書館学に喰われねばならない。情報学がかっこ良くポーズを決めているうちは本物ではなく、図書館学に喰われて姿を消さなければいけない」との言葉を紹介され、「情報学をデジタルアーカイブに、図書館学をMLAの館の学に差し替えるならば、今日でもこの構図は生き生きと蘇るように感じられる。」と講演を締めくくられました。

 シンポジウムでは、「アーカイブの課題と現状」と題し、東京国立博物館博物館情報課主任研究員阿児雄之氏をコーディネータに迎え、公共機関側のバネリストとして元国立科学博物館に勤務されており現在は岐阜女子大学教授の井上透氏、民間機関側のパネリストとしてエル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)館長谷合佳代子氏、そして基調講演をされた水谷長志氏を加えてテーマである「アーカイブの課題と現状」について討議が行われました。

 最初に井上氏と谷合氏からは以下のような話題提供がなされました。

 井上氏は、「博物館デジタルアーカイブは知識循環型社会の基盤」と題されて、国立科学博物館の事例として、国立科学博物館で行っているデジタルアーカイブ事業(1.展示解説システム、2.魚類写真データベース、3.子ども向けのデジタル学習コンテンツ、4.国立科学博物館地震資料室、5.標本・資料統合データベース、6.サイエンスミュージアムネット、7.GBIF(生物多様性情報機構)、8.ジャパンサーチ(BETA版))について説明を行われました 。 谷合氏は、「草の根アーカイブズの現状と課題」と題し、「草の根アーカイブズ」とは定義も確立されたものはないが、本報告では「民間の資料保存機関・「公的なものであっても、法律や条例によって設置されていない」・「大学・企業を除く」と位置づけた、と語られ、その上で「草の根アーカイブズ」の現状と山積する課題について報告がなされました。

 話題提供に続いては、パネルディスカッションにおいて活発な議論が行われ、当初は初のオンライン討議であることに不安があったものの、議論はスムースに進行しました。

 ポスター発表では以下の4件の発表が行われました:天野晃「新型コロナウイルスのホモログマップ作成法の紹介」、野口武悟(専修大学)「離島における読書環境整備の事例的検討:北海道礼文町の取り組みを中心に」、岡野裕行(皇學館大学)・桐村喬(皇學館大学)「つぶやかれたビブリオバトル:ツイッターのデータから見た普及の進み方」、徳武隼人(東京電機大学大学院)・矢口博之(東京電機大学)「大学生のメディア利用に関する実態調査」(以上、敬称略)。

 参加者による投票が行われ、野口武悟氏が最優秀ポスター発表に選出され、植村八潮会長より表彰が行われました。

 閉会挨拶は三和義秀副会長により行われ、会は盛会裏に終了しました。

■ 大会プログラム概要

10:00

受付開始

10:30

開会挨拶

10:35

基調講演
「“継承の困難”とMLA連携:その両者を繋げて学部学生の調査研究力の底上げを狙うことの試み」
  水谷長志氏(跡見学園女子大学教授・元東京国立近代美術館情報資料室長)

12:00

総会,昼食

13:30

シンポジウム
「アーカイブの課題と現状」
  コーディネーター:阿児雄之氏(東京国立博物館 主任研究員)
  パネリスト:井上透氏(岐阜女子大学教授・元国立科学博物館)
  谷合佳代子氏(エル・ライブラリー 館長)
  水谷長志氏(基調講演者)

15:45

ポスターライトニングトーク

16:45

ポスターディスカッション

17:30

表彰式,閉会挨拶


■ ポスター発表

  1. インターネットにおける個体化のシステム
     堀江郁智(東京大学)[発表辞退]

  2. 新型コロナウイルスゲノムのホモログマップ作成法の紹介
     天野晃

  3. 離島における読書環境整備の事例的検討 -北海道礼文町の取り組みを中心に-
     野口武悟(専修大学)

  4. つぶやかれたビブリオバトル -ツイッターのデータから見た普及の進み方-
     ◎岡野裕行(皇學館大学) 、桐村喬(皇學館大学)

  5. 大学生のメディア利用に関する実態調査
     ◎徳武 隼人(東京電機大学大学院)、矢口博之(東京電機大学)

* 発表資料について

第19回研究大会のポスター発表予稿集原稿は本ウェブページで公開をしています.

最優秀ポスター発表受賞者インタビュー

離島における読書環境整備の事例的検討 -北海道礼文町の取り組みを中心に-

 野口武悟(専修大学)

1. 最優秀ポスター発表受賞おめでとうございます.受賞について一言お願いします.

2. どういった経緯で今回の研究を行うことになったのでしょうか?

3. ポスター発表の研究概要について教えてください.

4. デザイン面などで工夫した点を教えてください.

5. ポスター制作にあたっての苦労話やエピソードなどありましたらば,教えてください.

6. ポスター発表時の会場の人からの反応はいかがでしたでしょうか?

7. ポスター発表の論文発表のご予定は?

■ おわりに

この大会の企画と準備は,以下の会員をメンバーとする大会企画委員会が中心となって行われました.これらの方々の多大のご尽力に感謝致します.

[大会企画委員会]
 委員長 日向 良和 都留文科大学
 委 員 天野  晃 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
 委 員 石川 敬史 十文字学園女子大学
 委 員 岡部 晋典 愛知淑徳大学
 委 員 佐藤  翔 同志社大学
 委 員 新藤  透 國學院大學
 委 員 千  錫烈 関東学院大学
 委 員 角田 裕之 鶴見大学
 委 員 長谷川幸代 中央大学