第24回研究大会が開催されました
■ 大会報告
2025年6月28日(土)に,情報メディア学会第24回研究大会を開催いたしました。会場は,國學院大學渋谷キャンパス(東京都渋谷区東4-10-28)および基調講演はオンラインによるハブリッド開催となりました。ポスター発表およびポスターディスカッションは現地のみの開催としました。
司会は杉本ゆか氏(郡山女子大学短期大学部)により行われ,参加者は現地:34名(会員19,非会員0,学生会員1,学生非会員8,賛助会員6)が参加いたしました。
■ 総会
研究大会の前に、会員にて総会が行われました。
■ 開会
角田裕之会長より開会挨拶をいただきました。
■ 基調講演
須永哲矢氏(昭和女子大学)より「いまさらながら,「日本語コーパスって何?」」と題した基調講演を行なっていただきました。
日本語学の研究で用例が必要となる場合,かつては「用例カード」を使用して実例を収集していたが,それに代わって電子的な検索ができる「コーパス」を使用して収集するようになったということが述べられ,その便利さが実感できる事例を紹介していただきました。コーパスの例として「中納言ライト版」「中納言」が取り上げられ,参加者も実際に確認しながら聴講していました。
文字列検索において,英語のようなスペースの存在がなく品詞の「活用」がある日本語は難しいということで,枕草子の一節を例に「白い」を検索しても「しろく」や「白き」がヒットするようにするのだということが説明されました。Google検索とコーパスの違いは,コーパスは閉じたものであり,出所が明確である点でありそれが良い点だということでした。最後に,コーパスの利用の間口を広げることの意義についてもお話がありました。
図書館情報学における,索引や統制語,シソーラスなどにも通じる側面があり,非常に有意義な講演となりました。
■ ポスター発表
ポスター発表では以下の発表が行われました。(◎は代表者)
最優秀ポスター発表賞は「学校図書館における実習体験の仮想化〜学校図書館VRの開発を通して〜」山本こゆき氏(筑波大学),三笠佑野氏(筑波大学),小野永貴氏(筑波大学)が受賞しました。
■ 賛助会員ライトニングトーク
賛助会員によるライトニングトークでは,日本事務器株式会社様より製品等のご紹介,日外アソシエーツ株式会社様より製品・書籍等のご紹介を頂きました。
■ ブース出展
以下の団体よりブース出展が行われました。
日本事務機器株式会社 日外アソシエーツ株式会社
■ 表彰式・閉会
最後に,最優秀ポスター発表賞の表彰式がおこなわれました。長塚隆副会長より閉会挨拶をいただき,閉会となりました。
■ エクスカーション
エクスカーションとして,國學院大學渋谷キャンパスの國學院大學博物館,國學院大學図書館,みちのきち(読書施設)の見学を行いました。博物館では,国立アイヌ民族博物館共催特別展「アイヌモシㇼ―アイヌの世界と多様な文化―」が行われておりました。また,図書館の見学では,職員の方から館内や展示資料と自動書庫の案内をしていただきました。
■ プログラム概要
| 12:30 | 開場 (國學院大學 渋谷キャンパス) |
| 12:45 | オンライン開場 |
| 13:00 | 開会挨拶 |
| 13:10 |
基調講演【ハイブリッド開催】 |
| 14:40 | 休憩 |
| 14:55 | ポスターライトニングトーク【対面開催】 |
| 15:30 | ポスターセッション【対面開催】 |
| 16:10 | 表彰式,閉会挨拶 |
| 16:30 | エクスカーション |
■ 第24回研究大会企画委員会
委員 天野 晃 鹿児島大学
委員 池田 光雪 愛知淑徳大学
委員 小牧 龍太 共立女子大学
委員 佐藤 翔 同志社大学
委員 下山佳那子 八洲学園大学
委員 杉本 ゆか 郡山女子大学短期大学部
委員 須永 和之 國學院大學
委員 千 錫烈 関東学院大学
委員 日向 良和 都留文科大学
委員 長谷川幸代 跡見学園女子大学
学校図書館における実習体験の仮想化 〜学校図書館VRの開発を通して〜
山本こゆき(筑波大学),三笠佑野(筑波大学),小野永貴(筑波大学)
1. 最優秀ポスター発表受賞おめでとうございます。受賞について一言お願いいたします。
山本:今回はこのような素晴らしい発表の機会をいただき大変光栄に存じます。私は学会発表の経験もない若輩者でしたが、皆様に温かく迎えていただき、さまざまな視点からご意見をいただくことができたことは、今後研究を続ける上で非常に貴重な経験となりました。
三笠:このような素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。日頃の研究成果を評価していただけたことで自信になったとともに、今後の研究への意欲が高まりました。
2. どういった経緯で今回の研究を行うことになったのでしょうか?
山本:母が学校司書であることから、その待遇について以前より関心があり、学生の立場からその改善に貢献したいと考えていました。大学四年生に進級し、卒業研究のテーマを指導教員の小野先生と話し合う中で、先進的な学校図書館の例をより多くの学習者に見てもらい、意識改革ひいては高度な専門職養成に資するような研究をすることで、将来的な待遇改善につながるのではないかという考えに至りました。また、現状では司書課程における「図書館実習」のような制度が学校図書館分野では少なく、その点にも疑問を抱いていました。これが、VRを学校図書館実習の代替手段の一つとして活用できないかと着目するきっかけとなりました。
小野:私は、授業で「学校図書館論」を教えていますが、学校図書館に対するイメージが人により乖離している状況に毎年遭遇しており、現場の実情を視覚的に見せる重要性を痛感していました。しかし、学校図書館分野の映像教材は年代が古いものが多く、解像度が低かったり、習得できる観点が現代にそぐわない場合などがあり、最新の視覚的教材の開発を望んでおりました。また、多くの学校図書館は一人職場ゆえ、担当者が代わると空間も一変する可能性があり、学校図書館の空間アーカイブを構築する意義も感じておりました。
3. ポスター発表の研究の概要について教えてください。
山本:本研究では、司書教諭及び学校司書の実習機会が少ないことについて着目し、VRがその代替手段となり得るかを検討しました。学校図書館のことを学ぶ学生は、自身の経験に基づく限定的な学校図書館観を持っており、実際の役割を理解することが困難なため、学校図書館の現状を伝える工夫が必要です。しかし現場の多忙さなどから、学校図書館でのインターンシップは限られています。そこで本研究では、埼玉県立飯能高等学校「すみっコ図書館」を対象に、館内を自由に見て回ることができる360度VRを制作しました。展示物の動画・画像とその詳細説明なども組み込むことで、学校図書館の空間設計や運営方針を、臨場感を持って伝えることができます。これにより、実習で得られる「学校図書館の現状を知る」という体験をVRで代替し、実習の第一歩を担います。今後は、利用実験や改良を重ねながら、多様な発想で学校図書館の構築・運営に資する人材育成につながることを目指したVRの開発を目指します。
4. デザイン面などで工夫した点を教えてください。
山本:清涼感のある水色を基調とし、強調したい箇所の色をピンクに近い赤色にすることで統一感を持たせました。また、実際の学校図書館VRの写真を大きく配置して、どのようなVRを作ったのか一目で分かるようにしました。さらに、タイトルの左上にプレゼン資料と同じ点線の円を配置し、ポスターを見た人が発表との関連性をすぐ認識できるようにしました。
5. ポスター制作にあたっての苦労話やエピソードなどありましたら、教えてください。
山本:ポスター制作自体が初めての経験だったため、実際に印刷するまで字や写真のサイズが小さいのではないか、色が薄く出てしまうのではないかと心配事は尽きませんでした。発表日直前に一度印刷してからデータの不備に気がつき、再印刷したのですが、もし学内ではなく印刷所に依頼した場合だったらと考えると肝が冷えます。この経験から、余裕を持った制作と入念なデータ確認の重要性を学びました。
また、ポスター制作だけでなく研究全般の相談にのってくださる小野先生と先輩方、同じ研究室の仲間の力添えがなければ発表まで漕ぎ着けることはできませんでした。この場をお借りして御礼申し上げます。
6. ポスター発表時の会場の人からの反応はいかがでしたでしょうか?
山本:ポスターを掲示した際、他の発表者の先生から「非常に見やすい」とのお言葉をいただき、発表時の大きな自信につながりました。また、会場の一番奥での掲示にもかかわらず、多くの方がポスターの前まで足を運びVRを体験してくださいました。その上で新たな機能追加のご提案や、学習者だけでなく司書同士の意見交換の材料にできないかといったご意見をいただき、自分にはなかった視点に大変勉強になりました。
7. ポスター発表をもとにした研究の展開のご予定は?
山本:今後は作成した学校図書館VRを実際の司書教諭・学校司書の方に見ていただき、実務者の視点から専門的な意見を伺って、より実習に近い体験が得られるようにVRを改良していく予定です。その後、司書教諭科目の履修者を対象に、改良したVRの利用実験を実施し、学校図書館VRの有効性を検証します。研究結果につきましては、再び学会発表や論文投稿を目指したいと考えております。